ペレットストーブのある家の設計

ペレットストーブの有る家の設計注意点


お客様から「ペレットストーブを設置したい」と言われた場合、多くの設計者は、どの様に設計を進めていっていいのか分からない状態かと思います。

ここでは、これからペレットストーブのある家を計画・設計していく場合の注意点などをご説明していきたいと思います。

なお、こちらの内容は中級者編となっております。

まずは下記のページを確認下さい。

ペレットストーブのQ&A

 

 



 

【ペレットストーブの配置する場合の重要な点】

ペレットストーブは暖房ですので、暖かさが十分享受できるような設計をするという点が重要と考えます。

 

ペレットストーブの有る家を設計するに当たって重要な点が

1、全体的な間取りと併せてペレットストーブの配置計画、煙突計画を行う。

2、ストーブで暖める範囲を決める。

3、暖める範囲が決まるとストーブの必要出力が決まる。

4、機種決定が出来る。

となるのです。

 

場合によってはペレットストーブで家全体を暖めたいとなる場合もありますが、重要な点は建築の間取りが決まり、「ここしか置くところが無い」といった消去法で設置場所を決めるのではなく、プランニング段階からストーブの配置を決めていくという点です。

 

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【ペレットストーブの基本的な知識】

ペレットストーブの基本的な知識を持ってから設計していただくと、各地域の販売店さんとのやり取りがスムーズに行くかと思います。

 

①二種類のあたため方

ペレットストーブによる暖め方は下記の二種類になります。

1)温風ファン式

温風ファンが内蔵されているストーブになります。

ストーブから温風ファンで熱を室内に放出するので室内全体のあたたまりが早いです。

一般的には側面や背面は手で触れる程度の暖かさになります。

2)輻射式、自然対流式

温風ファンを使わずにストーブに一度蓄熱し、蓄熱した熱を室内に放出するストーブになります。

ストーブに蓄熱するまでの時間が掛かるため、室内全体が暖まるまでの時間がかかります。

在宅時間が多いお宅などにおすすめのストーブです。

 


 

②機能等

国内で販売されているペレットストーブの多くは、電源スイッチを押せば自動で着火ができます。(タイマーでのオンオフ機能あり)

エアコンと同様に設定温度に達すると、自動で弱運転に切り替わる機能も付いております。

機種によってはリモコンが付属されていますので離れた場所からの操作も可能です。

 


 

③ストーブ本体の熱さ

ペレットストーブは部位によって熱さが異なります。

1、温風ファンタイプの対流式は両側面が触れる程度の熱さです。

輻射式は両側も熱くなるタイプが多いです。

2、前面扉とガラス部はヤケドする熱さとなります。

3、上部天板は前面扉ほどではないですが、そこそこの熱さになります。

 

背面や側面が薪ストーブほど熱くならないので炉壁の設置は不要です。

炉台(ストーブ下の耐火材)も不要な機種が多いのですが、灰掃除時の汚れ防止のために設置をすることが多いです。

 

但し、ストーブの機種により各部の温度が違いますので、必ずメーカーか販売店に確認をお願いいします。

※小さいお子様がご家庭ではストーブに近寄れない為のゲートの設置をおすすめします。

 


 

④給排気管の概要

給排気の方法は下記の2タイプになります。

1、ストーブ出口径が80㎜のタイプ(給気管別系統) ⇒欧州・北米製ストーブ

2、ストーブ出口径が75㎜のタイプ(給気管同系統)⇒国産ストーブ全般(一部国産ストーブも80㎜を採用しているメーカーもあります)

 

下記が煙突径80㎜の図となります。

※メーカーや機種によって高さ位置が変わります。

 

ですので、外国産はFE方式(給気は室内から取り排気は室外へ出す)にする場合は壁の開口が1か所となります。

FF方式(給気は室外から取り、排気は室外へ出す)の場合は給気の開口と排気の開口が発生し、計2か所の開口が必要になります。

 

下記は国産ストーブの背面図です。

給気と排気が同一管になっております。

 



 

【80㎜管の煙突の種類】

住宅に設置する程度の出力(5~15kw)のストーブは、本体からの排気出口径は80㎜シングル管となっております。

直管は2m、1m、50㎝、25㎝などが設定されております。

直管の他にT字管やエルボを組み合わせて排気系統を設計します。

下写真は軒を避けて配管した事例になります。


【75㎜管煙突】

下写真の様に真ん中が排気管で外側が給気となっております。

この給排気管で各種エルボなどを使用し組み立てていく訳です。

但し、この様な形状の為管の切断による長さ調整は出来ません。長さ調整はスライド管で行います。

 


【高気密住宅への対応】

一般的なペレットストーブは半密閉型ストーブとなっていて、背面の給気口以外にも正面のドア周りやペレットタンク・着火ヒーター等の隙間から室内空気をストーブに取り込んでおります。

最近の新築物件では気密性が向上しているので、ストーブ背面の給気口プラスαでストーブ用の給気口が必要になる場合があります。

 

高気密住宅へ半密閉型ストーブを設置した場合どのような事が生じるか?

〇キッチン換気扇を回した場合ストーブの炎が小さくなります。

〇給気⇒燃焼⇒排気のサイクルがスムーズ且つ適正に行われない為、ガラスが煤で曇りやすくなります。

 

対応策として

●ストーブ本体の隙間から燃焼空気が室内に漏れてくることになりますので、キッチン換気扇を同時給排レンジフードを採用すると共に差圧レジスターを追加設置する。

差圧レジスターは室内外の気圧差を感知し、必要な時に必要な分だけ給気をするものです。

●密閉型ストーブを採用する。

メーカー各社、密閉型のストーブを販売しておりますのでストーブの方で対応をすることも可能です。

但し、一般的に半密閉型のストーブより価格は高くなる傾向になります。

 



1)ストーブの配置計画

1、平面計画

①風圧帯の検討

煙突を壁出しにした場合、下記の様な住宅の入隅にストーブを設置してしまうと、煙突出口付近が風圧帯となり、煙突出口が風で蓋がされた状態となってしまいます。このような場合は煙突を屋根出しとするか、ストーブの位置の変更が必要です。

 

②火の粉の検討

ペレットストーブで使用するペレットは木質燃料なので灰が発生いたします。

壁出しで煙突を立ち上げても機種によっては、煙突内で燃え切らないで火の粉が発生する場合があります。

下記の様に住宅と道路が近く、道路側に煙突を向けている場合は、通行者等に火の粉が掛かる可能性もありますので、煙突を屋根出しにするか煙突の方向を変更するのがよろしいかと思います。(隣地への検討も必要です)

 

 

2、断面計画

お施主様へはストーブの配置によって暖かさが変わってくることをご理解いただくことが必要かと思います。

 

①下記の様に吹き抜けの下に配置した場合、暖気は吹き抜けから2階へあがるのでストーブ付近と2階は暖かくなりますが、ストーブの対面側は寒くなる傾向になります。

②それに対しストーブを吹き抜けの対面側へ配置することで、家全体が暖まる方向になります。

③吹き抜けと階段室を別々に設ける事で、1階と2階の空気が循環するので家全体が暖かくなります。

2)煙突の計画

排気の配管ルートは2種類、室内で立ち上げるか室外で立ち上げるかです。

①壁出しの場合

室外立ち上げのメリットとしては

・煙突掃除が比較的容易。

・室内で配管が立ち上がらない分、ストーブを壁に寄せることが出来る。

・配管が室内からは見えない。

室内立ち上げのメリットとしては

・煙突からの熱で室内を暖める事が出来る。

・室内に煙突が立ち上げっているとカッコいい。

 

②屋根出しの場合

屋根出しの場合も、室内で立ち上げるか室外で立ち上げるかの2種類となります。

屋根出しの場合は煙突長が長くなるため、壁出しよりも費用は嵩みますが、風圧帯によって排気が阻害されることがないため、安全性は壁出しよりも高いです。

 

③二重断熱煙突の採用

寒冷地の場合は二重断熱煙突の採用をおすすめします。

二重断熱煙突とは外気で排気温度が低下しないように、断熱材を挟み込んだものになります。

断熱材を採用することでドラフト(上昇気流)が低下することなくスムーズに排気が出来ます。

 

④二重断熱煙突と内径100㎜煙突の採用

寒冷地及び4m以上の立ち上げ、標高1500m以上の高地で設置を行う場合は80㎜管から100㎜管へボアアップし、且つ二重断熱煙突を採用が必須となります。

 

⑤横引き煙突

ペレットストーブはペレットという木質燃料を使用しますので、灰の発生は避けられません。

その為煙突を横引きすると、横引き部分に灰が溜まってしまい、良好な燃焼が確保できません。

設計上どうしてもという場合は2m以内になるように計画しましょう。

※横引き煙突はシーズン中の煙突掃除が必要になる場合があります。

 



 

3)機種選定

機種選定を進めていく上で

①主として誰が使うか?

②どの範囲を暖めるか?

という点を明確にする必要があります。

 

①の主として誰が使うか?ですが、高齢者が使用する場合、操作表示が日本語であることが望ましいと思います。

日本語表記は、国産ストーブか一部の日本語表示に対応した外国産ストーブになります。

 

また、ペレットタンクへの投入のしやすさという点も重要です。

一般的には国産ストーブは高さが低いストーブが多く、外国産ストーブは高いストーブが多いです。

その為、力のない高齢者だとペレットの投入が難しくなる可能性があります。

 

②のどの範囲を暖めるか?という点ですが基本的に暖気は横移動が苦手です。

下記の様な間取りの場合リビングダイニングキッチンしか暖められないと考えて下さい。(ドアを締め切った場合)

上記間取りに場合、リビングダイニングキッチンのみを暖めるのであれば5~7KWの出力のストーブで十分です。(断熱性が一般的な場合)

リビングダイニングのドアを開け放して2階まで暖め要るする場合は8KW以上の出力は必要かと思います。

 

 

その他にストーブ本体に

・鉄板を使用しているか

・鋳鉄を使用しているか

・天然石を使用しているか

で暖まり方が変わってきますので、上記の必要出力に関しては経験を持った販売店に問い合わせてください。

 



4)オプションの有無

下記の様な間取りにおいては、ペレットストーブの設置してあるリビングダイニングから離れた、寝室や脱衣洗面室へ暖気が届かないという点があります。

その為、寝室や脱衣洗面室へは他の暖房設備を追加するといった事が必要になります。

ペレットストーブはストーブ内にファンを備えており、ダクトを使用して他の部屋に暖気を送風することが可能です。

 

 

上記のダクト送風で個別の部屋を暖めるのではなく、床下に暖気を送って床全体を暖める事も出来ます。

床下全体を暖める工法は、基礎断熱が必要になります。

上記オプションに関しては、別途お問い合わせください。

 



5)最後に

ぺレットストーブはまだまだマイナーな存在です。(笑)

それ故、間違った知識を持ったままプランニングに入ってしまうと、暖かくない場所が出来たりして、結果的に『ペレットストーブは暖かくない』といったネガティブなイメージが定着しかねません。

そうなると本来は暖かく・手軽・経済的でエコであるペレットストーブの普及が阻害される要因となってしまいますのでご留意いただければと思います。

 

また、設置だけをすることは少々の知識があれば出来ますが、最適な燃焼で運転するためには専門的な知識が必要です。

ペレットストーブは『取り扱っている』というだけで業者を決めてしまうと設置後の運転が上手くいかない可能性がありますのでご注意を。

 

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ペレットストーブはこんな効果が・・・。

1)健康面

輻射熱で身体がポカポカになるためか、皮膚のカサカサが治ったり、風邪をひかなくなったりという方が多いです。

2)エネルギー自給率の向上

日本のエネルギー自給率は平成28年の段階で僅か8%です。

多くの原発が稼働していた311震災前の平成20年でも20%と低調な自給率です。

ペレットストーブを普及させることがエネルギー自給率の大幅に向上するとは考えていませんが、自国のエネルギーに目を向けることは必要です。

3)地域経済の活性化

一説には海外の物を買うよりも、自国で物で地産地消をすると経済効果は10倍との試算があります。

つまり、仮に石油ファンヒーターを使って暖房代に年間3万円使っていた場合、ペレットや薪の日本国内で生産されるエネルギーを使用すれば30万円の経済効果があるという事になります。

地方の人口減少や疲弊が叫ばれて久しいですが、エネルギーの地産地消により、地域経済の活性化に協力しませんか?

4)家族の絆

人は自然と火のある所に集まります。

また、人は暖かを求めて火を囲みます。

家の中に人が集まる場所を設けませんか?